サンクト・ペテルブルグを巡る映画紀行>歴史と文化の都サンクト・ペテルブルグ

一緒にいることが幸せならば、どうして、ずっと幸せであってはいけないの?
1986年第7回マドリード国際映画祭最優秀女優賞(エレーナ・サフォーノワ)
冬のチェリー
ЗИМНЯЯ ВИШНЯ(WINTER CHERRY)
 この映画は、ゴルバチョフ書記長が登場し、ペレストロイカが始まる時代の直前に作られた作品です。1970年〜80年代前半のソビエトは、社会・文化のあらゆる面で"停滞"の時代でした。高度に官僚化した社会は、政治や経済の停滞を引き起こしました。一方、革命や戦争、あるいは"社会主義建設"といったそれまでのソビエト社会が抱えていた大きな目標を失ったことで、私生活を大事にする人々が増えました。しかし、女性の就労があたり前となったソビエトでは、離婚、出生率の低下も大きな問題となり、家族の結びつきの強化を求める動きもありました。この映画は、そうしたソビエト社会の中で、シングル・マザーとして生きる、ひとりの女性を描くドラマです。
 監督のイーゴリ・マスレンニコフは1931年生まれ。レニングラード大学在学中はジャーナリスト志望で、一時は新聞社に勤めていました。巨匠グリゴーリー・コージツェフ監督に師事して高等監督コースで学び、1967年よリレンフィルム・スタジオに入所しました。代表作には「センチメンタル・ロマンス」(1977年)他がありますが、人気番組「映画ファンのために」にしばしば登場するなどテレビの世界でも活躍しました。
 ウラジーミル・フルツキーは、ソ連映画界で最も著名な脚本家の一人で、アニメーション「長靴をはいた犬」からSF映画「ピルクスの審問」に至るまで幅広いジャンルを手がけています。この監督と脚本家の二人は、それまでにも何度かコンビを組んでいますが、最大のヒット作はテレビ映画「シャーロック・ホームズとワトソン博士の冒険」(1980年〜83年)で、数百万人に及ぶ視聴者をブラウン管の前に釘付けにして話題となりました。
 ヒロインのオリガを演じたエレーナ・サフォーノワは、「マダム・パタフライの帰還」(1983年)のソローミヤ・クルシェリニツカヤ役で俄かに脚光を浴びた新進女優。繊細で表現豊かな演技をみせ、真実の愛と幸福を切望しながらも、子供を育てながら孤独に生きる現代女性をリアルに形象化して高い評価を受けました。エレーナ・サフォーノワは、この映画の演技で、1986年第7回マドリード国際映画祭最優秀女優賞を受賞しています。
 オリガの不倫相手、ワジームを演じているヴィターリー・ソローミン(「シベリアーダ」1979年 他)は、黒澤明監督作品「デルス・ウザーラ」(1975年)で探検家アルセーニェフを演じたユーリー・ソローミンの弟です。彼も兄と同じく、ソビエト映画界の人気俳優のひとりです。
 この映画は大ヒットし、1990年には「冬のチェリー2」が製作されました。
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