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赤いりんご

[第14回ソビエト映画祭(1976.11/26〜12/3)パンフレットより転載]

[かいせつ]

第28回ロカルノ映画祭国際審査員賞受賞
 この映画は最近のソビエト映画界でもとくに話題作が多いキルギス映画で、キルギスの著名な作家チンギス・アイトマートフの短篇小説の映画化である。
 トロムシ・オケエフ監督は1935年生まれ、ヴォロト・シャムシェフ監督(本年度全ソ映画祭大賞受賞の『白い汽船』の監督)と並んでキルギス映画の代表的な監督であり、『わが幼き頃の空』『炎の前に頭を下げよ』『灰色の狼』(74年ロカルノ映画祭国際審査員賞受賞)などの作品で国際的にも知られている。レニングラード映画技術大学出身で、録音技師として働いていたが、その後さらにモスフィルムの高等映画監督コースを終了して、監督となった。
 『赤いりんご』は画家テミールの小さな家庭を舞台に、テミールの胸のうちに消ゆることのない初恋の思い出がこの小さな家庭にもたらす波紋やさまざまな苦しみを、さらには人間関係の複雑な綾を描くもので、監督は"詩的なメロドラマ"と云っている。同時に、キルギスの急激な変貌を目のあたりにしてきたオケエフ監督がこれまでの作品で一貫して追求してきた、過去と現在、自然と人間、古い伝統の世界と現代文明と云ったテーマもこの映画で重要なテーマとなっている。
 画家テミールには、自らも美術専問学校の出身で絵心のあるシュイメンクル・チョクモロフ(主な出演作品に『灰色の狼』『デルス・ウザーラ』がある)が扮して、映画でもかれの作品が披露される。カメラはクラコウ短篇映画祭金賞受賞の『デュイセンの橋』の撮影監督コンスタンチン・オロザリエフで、初めての長篇劇映画である。イススィク・クリ湖、山河、森、町など、キルギスの美しい自然とその現代的な風貌とをリリカルにとらえたオロザリエフの映像もこの映画の特徴である。

[あらすじ]
 それはもうだいぶ昔の話になる。テミールが芸術専問学校に学んでいた頃だ。ある日、かれは町の図書館の閲覧室で少女に出会った。それから毎日、テミールは街でかの女とすれ違い、かの女の家の門前までかの女を追っかけて行くが、声をかける決心がつかない。
 ところが秋も終りの頃、かれはクラスメートと一緒に郊外の農園に行く。収穫も終り、木々はもう実を残していなかった。だが赤い大きなりんごが一つ、木の葉がくれに残っていたのだ。かれは恋焦がれていたかの女にそれをプレゼントした。夜のことだった。かの女は思いがけない贈り物に驚き、礼を云ったが、ひと誰か別の青年と去って行った……こうしてテミールにはかの女は美しい見知らぬ女のままで終ってしまった。
 あれから歳月も過ぎた。いまではかれは名の知れた画家となり、アナウンサーの妻との間に娘も生まれた。
 だがテミールはその初めての愛を忘れられない。妻はテミールとの間に越えることのできない溝を感じていた。喜びも感じられない、重苦しい日々、妻はこんな生活に耐えられず家を出て行く……。
 父と娘の二人の生活が始まる。妻はいつかここへ戻ってくるのだろうか?テミールは娘に自分の家庭に起きた事柄を説明したいと思う。だがなかなかそういうチャンスが来ない。娘はテレビのスクリーンに映るアナウンサーの母の顔を見ては帰る日を待ちわびている。気まずい、辛い生活が流れていく。
 そして秋、農園のリンゴの木の下に父親は腰を下ろす。そこなら父親は娘に語るべき言葉が見つかると思ったのだ。だが農園の片隅から娘は声をあげた。「パパ、わたしりんごを見つけたの」と。大きな赤いりんごはかってここでかれが見つけたあのりんごにそっくりだったし、かれはもう娘に自分の家庭に起きた悲しく辛い事実を話す気になれなくなってしまう。
 夜おそく、二人は家にたどりついた。外は冷たい秋雨が降り注いでいた。そして少女はその赤いりんごを胸に抱きながら「パパ、あたしこれを大事にとっておいて、ママにあげるわ」と云った。

[スタジオ/製作年] キルギスフィルム1976年製作

[スタッフ]
脚本:チンギス・アイトマートフ
   エリガ・ルインジナ
   トロムシ・オケエフ
監督:トロムシ・オケエフ
撮影:コンスタンチン・オロザリエフ
美術:ジャムブル・ジュマバエフ
音楽:シャンドル・カロシ

[キャスト]
テミール:スイメンクル・チョクモロフ
サビラ:グリサラ・アジベコワ
見知らぬ女:タットゥビュビュ・トゥルスンバエワ
アナラ:アナラ・マセカドィロワ

[ジャンル] 長編劇映画
[サイズ] 35mm / カラー / 全8巻

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