[かいせつ]
1962年ベネチア映画祭金獅子賞
サンフランシスコ映画祭監督賞ほか受賞
1959年発表のベストセラー小説、ウラジーミル・ボゴモーロフの短篇「イワン」の映画化で、当時30才のタルコフスキー監督の長編処女作で、その後のタルコフスキー監督の鬼才ぶりをうかがわせる秀作である。
独ソ戦によって両親を失った12才の少年イワンが、憎しみに身を焦がしながら、かたくなに偵察行動に参加し、その幼い命を落とす物語を、少年の記憶に残る平和な日々を辿る詩情豊かで美しい回想シーンと、少年が命を犠牲にせざるを得なかった厳しい現実のリアルな描写のコントラストで描いていく。戦争によって歪められた少年の心に暖い眼差を向けながら、戦争の犠牲となった幼い命の尊厳が静かに謳いあげられる。また、戦闘シーンよりもむしろ戦闘の合間の静寂を描いて戦争の悲惨を映して、少年の悲劇と人々が争うことの虚しさをうかびあがらせる。
独ソ戦をテーマにしながら、映像の美しさとそこにまだあどけない少年を登場させるなど、同じテーマの他の作品には見られない構成の瑞々しさが、世界各地で大きな感動と反響を呼び起こした。
主演のニコライ・ブルリャーエフは、アンドレイ・ミハルコフ=コンチャロフスキーの「少年と鳩」が映画初出演たが、、この作品が本格的なデビューとなった。その後は演劇学校を経て、全ソ国立映画大学監督科に学び、卒業制作「ワーニカ・カイン」は国外映画祭で受賞している。 |
|
[あらすじ]
雨はあがり、村に立ちこめる霧も晴れようとしている。美しい緑の森からはカッコーの鳴く声がこだましてくる。だが、少年の意識は瞬く間に井戸の底へと下降していく。「母さん!」と叫んで目を覚ますイワン少年はまだ12才。いつも、このように、平和な故郷と母の夢に酔い、目ざめて現実にかえるのだ。
ドイツ軍に美しい故郷を踏みにじられ、両親も妹も失ったイワンはナチス・ドイツヘの激しい憎しみから、パルチザンに協力している。危険を犯して敵の占領地域を偵察するという大人も顔負けの任務をこなしているのである。
だがガリツェフ上級中尉も、グリャズノフ中佐も、ホリン大尉も、カタソーノフ古参兵も、彼をこのまま危険な仕事につかせておきたくなかった。大人たちはイワンの身を案じ、後方にもどして学校へ通わせようとするが、イワンはそれを拒む。
ドイツ軍の攻撃が激しさを増した頃、イワンは対岸の敵の情勢をさぐるため命がけの偵察の役を強引に買ってでた。ホーリン、ガリツェフ、イワンを乗せた小舟が河を渡り、敵の前線地域へ入った。対岸には、斥候に出かけたまま帰ってこなかった2人の兵士の遺体が並べられていた。イワンは大人たちと別れ、闇に姿を隠した。
そして、その後イワンを見た者は誰もいない。
戦いは終り、祖国に平和が蘇った。水辺に子供たちが戯れあうようになっても、イワンは戻ってこない。みるかげもなく破壊されたかつてのナチ司令部の建物、その中にはソビエト軍捕虜の処刑記録が残っていた。その傷ましい記録を一枚一枚調べていたガリツェフ中尉は、そこにイワンの写真が貼りつけられたカードを見つけたのだった。 |
|
[スタジオ/製作年] モスフィルム・1962年製作 |
|
[スタッフ]
原作:ウラジーミル・ボゴモーロフ
脚本:ウラジーミル・ボゴモーロフ
ミハイル・パパーワ
監督:アンドレイ・タルコフスキー
撮影:ワジーム・ユーソフ
美術:エフゲニー・チェルニャーエフ
音楽:ヴャチェスラフ・オフチンニコフ |
|
[キャスト]
イワン:ニコライ・ブルリャーエフ
ホーリン:ワレンチン・ズブコフ
ガリツェフ:Ye・ジャリコフ
マーシャ:V・マリャービナ
イワンの母:イリーナ・タルコフスカヤ
グリャズノフ:ニコライ・グリニコ |
|
[ジャンル] 長編劇映画
[サイズ] 35mm / スタンダード / モノクロ
[上映時間] 1時間34分
[VIDEO・DVDなど] VIDEO=IVCV-64024 DVD=IVCF-13 アイ・ヴィー・シー
デジタル完全復元盤[ロシア映画DVDコレクション]「僕の村は戦場だった」RCCF-1024
お求めはロシア映画社電網店「僕の村は戦場だった」で |