[「ロシア映画の全貌91」増補版より転載]
[かいせつ]
原作は1885年に発表されたロシアの人道主義作家ウラジーミル・コロレンコ(1853〜1921)の中篇小説「悪い仲間」。
作者自身の少年期の回想で、コロレンコは、生きるための基本的権利すらも奪われた不幸な人々を擁護し、専制下の社会的不公正を鋭く告発している。作家のヒューマニズム、人間の尊厳、自由と幸福への希求、不正への抗議は、この種のテーマを得意とする女流監督、キラ・ムラートワが手がけたことで、原作にも勝る迫力で、観る者を圧倒する。
撮影のアレクセイ・ロジオーノフは1947年生まれで、72年、モスクワの国立映画大学卒業。現代ソビエト文学の映画化、ワレンチン・ラスプーチン原作「別れ」(82
E・クリモフ監督)の共同撮影監督でデビュー、つづいて「灰色の石の中で」を撮り、シャープで端正な映像が注目された。
判事を演じたスタニスラフ・ゴヴォルーヒンは、ドキュメンタリーの監督としても有名。子役は、いずれもオデッサの小学生と保育園児で、映画初出演。 |
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[あらすじ]
母が死んだ6歳の年から、ワーシャは孤独の恐ろしさを知った。判事である父は、最愛の妻を亡くした悲しみにうちひしがれて、夢遊病者のように虚ろな日々を送っていた。
屋敷の中では、ワーシャに暖かい言葉をかける者はない。
その頃、町では廃城に巣くっていた浮浪者が、追いたてられて町はずれの山にある礼拝堂の付近に住み着いたという噂だった。好奇心にかられたワーシャは、ある日、その礼拝堂と墓地の探検に出かけた。そこで彼は、浮浪少年ワリョークと、その妹のマルーシャに出会った。ワリョークは、ワーシャより少し年上の、大人びた少年で、マルーシャは可憐なおとなしい少女だった。ワーシャは、この二人とすっかり友達になり、家から食べ物を持ち出しては、彼らの所へ通うようになった。
だが、病弱なマルーシャは、日に日に元気を失っていった。ワーシャは、妹のソーニャが母の形見にもらった豪華な人形を家から持出して、可哀想なマルーシャを慰めようとするが…。 |
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[スタジオ/製作年] オデッサ劇映画スタジオ・1983年製作 |
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[スタッフ]
原作:ウラジーミル・コロレンコ
脚本・監督:キラ・ムラートワ
撮影:アレクセイ・ロジオーノフ
美術:ワレンチン・ギドリャーノフ |
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[キャスト]
ワーシャ:イーゴリ・シャラーポフ
マルーシャ:オクサーナ・シラパク
ワリョーク:ロマン・レフチェンコ
ワレンチン:セルゲイ・ポポフ
父:スタニスラフ・ゴヴォルーヒン |
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[ジャンル] 長編劇映画
[サイズ] 35mm / スタンダード / カラー
[上映時間] 1時間28分
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