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「クロイツェル・ソナタ」パンフレット(1989年11月11日発行)より転載
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「戦争と平和」「アンナ・カレーニナ」など
不朽の大作を著わした文豪レフ・トルストイ
の晩年の代表作「クロイツェル・ソナタ」
(1889)の完全映画化である。原作は肉欲的
嫉妬から妻を殺した夫の告白を通して、当時
の退廃的な性道徳を批判し、結婚生活の欺
瞞を暴いた作品として有名で、その芸術的な
円熟は「これに肩を並べられるだけのものは
他にない」(ロマン・ロラン)と言われている。
ソビエトではこれまでに、1911年、ピョートル・
チェルドィニン監督により、また、1914年にウ
ラジーミル・カルディン監督により映画化さ
れているが、革命後は今回が初めて。ミハイ
ル・シヴェイツェル監督は1920年生まれで、
モスクワの国立映画大学でセルゲイ・エイゼ
ンシュテイン監督に師事、やはりトルストイ
原作の「復活」(60〜62、62年ロカルノ国際映画
祭国際批評家連盟賞受賞)で国際的に名を馳
せ、以後も多彩なジャンルで文芸作品の映画
化に取り組んできたベテランである。共同監
督のソフィア・ミリキナはシヴェイツェル監督夫人。
1956年より同監督の助手を勤めている。
監督は25年ぶりに再び、トルストイ作品に
挑んだ理由について、「"クロイツェル・ソナ
タ"はおそらく、今日最も重要で大切な思想
を内包している。家庭生活を例にして嘘がも
たらす悲劇を、まづ第一に自分自身を偽るこ
との不幸をもの語っているのである。たとえ
それがどんなに残酷なものであろうと真実の
みが、人々に周囲の世界とおのが分を真に理
解させ、客観的現実を悟らせ、最終的には幸
福に導くことになる。トルストイの思想に従
えば、人類の不幸と悲劇は真実への恐怖感や
人生への自分本位でエゴイスティックな態度
に根ざしているのである。偉大なヒューマニ
ストは真実の大切さも、人各々が己れにも他
者にも誠実でなければならぬことも、人類が
精神的に生き残る条件としてもの語っている
のである。21世紀への戸口に立つ現代文明が
孕む多くの問題は、この芸術家の思想と何と
相通ずることか」と語っている。
 この映画は物語が主人公ポズドヌイシェフ
の告白で進行する独白映画であるが、監督は
むしろ、原作からダイナミックで波乱に富む
音楽的構成を触発されたと言っており、映画
では嫉妬の果てに殺人を犯す主人公の激昂し
ていく気持が独白と回想シーンを交錯させな
がら明らかにされ、かつての上流貴族の寵児
ポズドヌイシェフの破滅的な愛の苦悩、精神
と肉体の悲劇的分裂がいきいきと描かれている。
 カメラはカンヌ国際映画祭審査員特別賞受
賞の「繊悔」で一躍、名を知られることにな
ったミハイル・アグラノヴィチ。"ドラマ"と
"抒情"を微妙な色調の変化で使いわけた映像
処理が効果をあげている。
 ポズドヌイシェフにはタルコフスキー作品
でもおなじみのオレーグ・ヤンコフスキー、
主人公の複雑でデリケートな内面と凶行に及
ぶまでの狂気を見事に演じている。ヒロイン
に抜擢されたのはこれが映画デビュー作とな
った、レニングラド・マールイ・ドラマ劇
場の女優イリナ・セレズニョーワ。他にア
ッラ・デミードワ(「かもめ」他)、アレクサン
ドル・カリャーギン(「愛の奴隷」「機械じかけ
のピアノのための未完成の戯曲」他)らベテラ
ンが共演している。また、リザの不倫の相
手を演じているのは俳優ではなく音楽家のド
ミトリー・ポクロフスキー。音楽監督は、い
ま注目の現代ソビエト音楽の代表的作曲家ソ
フィア・グバイドゥーリナで、劇映画の他、ア
ニメや記録映画まで幅広いジャンルで映画音
楽も手がけている

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