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機械じかけのピアノのための未完成の戯曲
НЕОКОНЧЕННАЯ ПЬЕСА ДЛЯ МЕХАНИЧЕСКОГО ПИАНИНО

[かいせつ]
1978サン・セバスチャン国際映画祭“金の貝殻"賞
   シカゴ国際映画祭金賞他
昭和55年度芸術祭優秀賞受賞

 チェーホフの大学時代の戯曲「プラトーノフ」に「地主屋敷で」「文学教師」「三年」「わが人生」などの短篇のモチーフを加えて映画化した、ニキータ・ミハルコフ監督初の文芸作品。
 19世紀末の没落しつつある貴族の田園生活を背景に、ロシア・インテリ層を被う退廃的な雰囲気を軽妙酒脱なユーモアに包んで描写し、チェーホフ喜劇の精神を生き生きと伝えている。また自動ピアノの演奏、貴族や地主達の乱痴気パーティーなど、個々のエピソードも非常に斬新な印象を与え、全篇にみなぎるその洗練された感覚と才気はチェーホフ戯曲への大胆な解釈とともに、完成当時32才のこの若き監督の才能の証として、ミハルコフ監督の名を世界に知らしめた。
 スタッフや俳優とのコンビに特別な配慮を払うミハルコフ監督は、サーシャ役にこれが映画初出演となったマールイ劇場の女優エヴゲーニヤ・グルーシェンコを抜擢したが、その他のキャスト、スタッフは殆んどが第一作以来の"ミハルコフ組"の顔ぶれ。「愛の奴隷」(76)にひき続いてエレーナ・ソロヴェイが主演し、モスクワ芸術座のアレクサンドル・カリャーギン、ユーリー・ボガトィリョフ。レニングラード青少年観客劇場所属のアントニーナ・シュラーノワ(映画出演作は『戦争と平和』『チャイコフスキー』など)。演出家で俳優の大ベテラン、オレーグ・タバコフ。マヤコフスキー劇場所属で『甦れ魔女』で知られるアナトーリー・ロマーシン。いずれ劣らぬ演劇界の名優たちの競演と見事な俳優アンサンブルはこの映画の魅力の一つである。また、医師トリレツキーを監督自らも好演していて、見落とせない。
 リストの「ハンガリー狂詩曲」と、ドニゼッティのアリア「人しれぬ涙」(歌劇「愛の妙薬」より)の調べもこのドラマを一層、効果的に盛りあげている。
 この映画は、ニキータ・ミハルコフの監督としての日本初登場作品となったが、1980年当時の日本の映画興行システムでは一般公開は難しいとされていた。これに対し、三百人劇場のスタッフは大英断をくだし、ロードショー公開を敢行した。はたせるかな、その上映は、「文化史上の事件」とさえ呼ばれるほどの話題となり、ニキータ・ミハルコフはアンドレイ・タルコフスキーに続くソビエトの映像作家として人気を獲得するところとなったのである。

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[あらすじ]
 前世紀末のロシア。ある暑い夏の昼下り、美しい田園風景を見下ろすヴォィニーツェフ将軍の未亡人アンナの館には、将軍の先妻の息子セルゲイの業績を一目見ようと、退役大佐トリレツキー、その息子で医者のニコライ・トリレツキー、アンナに恋焦がれる老地主グラゴーリェフ、一代で功をなした労働者出身の地主ペトリン、常に貴族の優位を主張する地主シチェルブークとその娘たち、ニコライの妹サーシャを妻にした小学校教師プラトーノフらが、まるで長い冬眠から覚めたかのように久方ぶりに寄り集ってきている。
 アンナは早速、高価な自動ピアノを披露して一同の度肝を抜いたが、プラトーノフの表情は冴えない。セルゲイの妻ソフィアこそ彼の初恋の相手だったのだ。7年ぶりの再会に、平穏無事な日々を送っていた彼の心は揺れ動く。胸の動揺を見られまいと、自ら道化役を演じて見せるプラトーノフは過去の糸をたぐるように、誠実な生活を夢みていた少女を、いまのソフィヤに偲ぼうとするが、その面影はない。それはソフィアとて同じこと、人生の華々しい成功を志していた大学生プラトーノフのありし姿は、一介の田舎教師プラトーノフからはうかがいしれない。
 カード遊び、そして空しい馬鹿騒ぎ…。彼らのアンニュイな一日も暮れ、やがて夕食の席をはさんで交わされるシニカルな議論。会話が途だえた瞬間、プラトーノフは「最近、私が読んだ小説ですが……」と前置きして、ギターを爪弾びきながら、7年前の自分とソフィアとの関係をもの語り始める。プラトーノフの話に思いをかき乱され、部屋を出ていくソフィア。
 宵闇に花火が映え、水辺で抱き合うプラトーノフとソフィア。だが失った過去はニ度と戻らない。 空が白みかけたバルコニーで、ソフィアは「それぞれ新しい未来を築きましょう」と告げるが、帰らぬ青春への深い悔恨と失望を抱いたプラトーノフは川へ身を投げ、自殺をはかるが、川は浅くて死ぬことなどできない。
 暑い夏の陽ざしが夜明けを告げる頃、館を離れようとヴォイニーツェフが乗りこんだ馬車の幌の陰には夫と肩を寄せあって坐るソー二ャの姿が見え、庭の草むらには川から上ってくるプラトーノフとサーシャに向って駆け寄る、眠りを破られた人々の群が見える。そして、アンナの「すべて昔どおりね」と言うつぶやきが聞こえてくるのだった。

[スタジオ/製作年] モスフィルム1977年・製作
               
Mosfilm/1977

[スタッフ]
原作:アントン・チェーホフ
   「プラトーノフ」他
脚本:アレクサンドル・アダバシャン
    ニキータ・ミハルコフ
監督:ニキータ・ミハルコフ
撮影:パーヴェル・レベシェフ
美術:アレクサンドル・アダバシャン
    アレクサンドル・サムレキン
音楽:エドゥアルド・アルテミエフ

Script : Alexander ADABASHYAN
      Nikita MIKHALKOV
Direction : Nikita MIKHALKOV
Camera : Pavel LEBESHEV
Art direction : Alexander ADABASHYAN
Alexander SAMULEKIN
Music : Eduard ARTEMYEV

[キャスト]
アンナ・ヴォイニーツェワ:アントニーナ・シュラーノワ
セルゲイ・ヴォイニーツェフ:ユーリー・ボガトィリョフ
ソフィヤ・エゴーロヴナ:エレーナ・ソロヴェイ
ミハイル・プラトーノフ:アレクサンドル・カリャーギン
その妻・サーシャ:エヴゲーニヤ・グルーシェンコ
ポルフィーリー・グラゴーリエフ:ニコライ・パストゥーホフ
パーヴェル・シチェルブーク:オレーグ・タバコフ
ニコライ・トリレツキー:ニキータ・ミハルコフ
ゲラーシム・ぺトリン:アナトーリー・ロマーシン
ヤコフ:セルゲイ・ニコネンコ

Anna : Antonina SHURANOVA
Sergei Voinitsev : Yuri BOGATYRYOV
Sofya : Yelena SOLOVEI
Platonov : Alexander KALYAGIN
Sasha : Yevgeniya GLUSHENKO
Porfiri Glagolyev : Nikolai PASTUKHOV
Pavel Scherbuk : Oleg TABAKOV
Nikolai : Nikita MIKHALKOV
Petrm : Anatoly ROMASHIN
Yakov : Sergei NIKONENKO

[ジャンル] 長編劇映画
[サイズ] 35mm / スタンダード / カラー / 全11巻 2818m
[上映時間] 1時間41分
[日本公開年・配給] 1980/12/20(三百人劇場) 日本海映画配給
[VIDEO・DVDなど] VIDEO=IVCB-7026, DVD=IVCF-49

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