[かいせつ]
1980年オックスフォード国際映画祭最優秀作品賞、撮影第一賞、最優秀男女優賞
ニキータ・ミハルコフ監督の「機械じかけのピアノのための未完成の戯曲」につづく長編第五作で1980年カンヌ映画祭に出品されて評判となった。
19世紀の文豪、イワン・ゴンチャーロフの代表作で、主人公の名が、無気力、怠惰な人生の代名詞にまでなった「オブローモフ」(1859)の映画化である。
世紀末、無為に過ぎゆく人生を、何とか有意義に送ろうと努力するものの、所詮は怠惰な生活に安住してしまうロシア・インテリゲンチャの典型、オブローモフ。一方、彼の友人で対照的にプラグマティックな生き方をするシュトルツ。そして知的で感情豊かな、自らの意志を持ったロシア文学の理想的なヒロイン、オリガ。映画はこの三人が織りなす人間関係を軽妙タッチで、そして時に諷刺を交えて描いていく。
「機械じかけのピアノのための未完成の戯曲」でその名優ぶりが日本にも知られることになったオレーグ・タバコフ、ユーリー・ボガトィリョフ、エレーナ・ソロヴェイに、ベテランのアンドレイ・ポポフを加えての見事な俳優のアンサンブル。ロシアの田園風景を捉えたパーヴェル・レベシェフの光と陰が綾なす美しい映像。エドゥアルド・アルテミエフの流麗な音楽と、この映画は"ミハルコフ組"の面目躍如といった作品である。
→→参考文献「オブローモフの生涯より<内外の反響より>」を読む→→ |
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[あらすじ]
ペテルブルグのゴロホフ通りに面した家。イリヤ・イリイッチ・オブローモフは、まだ30歳をすぎたばかりというのに、ペルシャ織りの部屋着をまとってベッドに横たわったまま、食べる時以外は一日中、起きあがろうともしない。
かつて12年前、眠ったようなオブローモフカ村からペテルブルグに移り住んで来た頃には、オブローモフもまだ若く、将来の希望に燃えていた。だが大学を出ると、いったん官吏になったものの、すぐに嫌気がしてやめてしまい、その後は召使いのザハールと二人、ここでとりとめもなく毎日を送っていた。そして日常生活のあれこれはもちろん、自分の領地の管理すらうとましく思えた彼にとって、頼りになる相談相手は幼な友達のシュトルツ一人だったのである。
一方、幼なじみのドイツ系ロシア人のシュトルツは優秀な官吏で、精力家だった。彼はオブローモフの生活態度を"オブローモフ主義"と呼び、その無為な生活を改めさせようとしていた。ある時、シュトルツは知人イリンスキーの美しい娘オリガをオブローモフに紹介する。思いがけなく、オブローモフはオリガに心を奪われた。
シュトルツが冬のロシアをあとにパリに旅立ってやがて夏を迎える頃、オブローモフはオリガの別荘の近くに移り住んだ。二人は逢瀬を重ね穏やかな陽光が注ぐ静かな田園の一隅で読書や散策に時を過ごした。オブローモフは疑いもなく、オリガに恋をしていた。彼女も自分の力でオブローモフを立ち直らせることができると信じた。
だがオリガの思いとは裏腹にに、何一つ報いる言葉を見出せないでいるオブローモフ…。彼は思い悩んだあげく、やはり新たな一歩を踏み出すことができない。
そんなある日、オリガのもとに若い貴公子と美しい令嬢たちが寄り集った。戯れさわぐ若者たちの中でもひときわ華やいで見えるオリガを眼のあたりにして、オブローモフはいよいよ、自分が彼女にふさわしくないと考える。それから二日間、彼は落胆のあまり、部屋に閉じこもって一歩も外に出ない。
やがてシュトルツが外遊から帰国すると、彼らにも賑やかな時が戻ってきた。再び三人の楽しげな声が田園にこだまする。そしてその時、人間としても一段と成長し、美しくなったオリガに再会して、シュトルツの胸に愛が芽ばえたのである。二人の仲を知ったオブローモフは自らこの地を去る。オリガはその後もオブローモフを訪ねもしたが、ついに二人の愛は実を結ぶことはなかった。
翌年、シュトルツとオリガは結婚し、一方、オブローモフもさる未亡人と結婚した。オブローモフは息子が生まれると、シュトルツの名を取ってアンドレイと名付けた。
それから7年後、父親を亡くしたアンドレイはシュトリツ夫妻に引き取られたのである。 |
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[スタジオ/製作年] モスフィルム・1979年製作 |
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[スタッフ]
原作:イワン・ゴンチャーロフ
脚本:アレクサンドル・アダバシャン
ニキータ・ミハルコフ
監督:ニキータ・ミハルコフ
撮影:パーヴェル・レベシェフ
美術:アレクサンドル・アダバシャン
アレクサンドル・サムレキン
音楽:(ペリー二,ラフマニノフによる)
エドゥアルド・アルテミエフ |
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[キャスト]
イリヤ・オブローモフ:オレーグ・タバコフ
オリガ:エレーナ・ソロヴェイ
アントドレイ・シュトルツ:ユーリー・ボガトィリョフ
ザハール:アンドレイ・ポポフ
アレクセイエフ:アバンガルド・レオンチェフ |
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[ジャンル] 長編劇映画
[サイズ] 35mm / スタンダード / カラー / 2部作 全15巻 3914m
[上映時間] 2時間20分
[日本公開年・配給] 1981/4/28(三百人劇場) ・日本海
[VIDEO・DVDなど] VIDEO=IVCV-64055(上)IVCV-64056(下),
DVD=IVCF-158 RCCF-1009 アイ・ヴィー・シー |