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無断転載を禁ず -P21- 「ふたりの駅」パンフレット(1985年10月12日発行)より転載

プラトン「結婚してるの?」
ヴェーラ「まあね。3年前に別れたわ。
息子と夫の両親が一緒よ」
 酔っ払った工員風の男、新聞紙にく
るんだ自動車部品を持って2人に近づ
いてくる。
「自動車の部品、買わないか?酒代
が出ればいい」
ヴェーラ「(押し返しながら)この人は
旅行者よ」
プラトン「別れた男の親を養ってるの?」
ヴェーラ「他人のような気がしないの
よ。いい人たちでね。別れる時も味方
してくれて」
駅前広場
 すでに人影もない広場。あいにくバ
スは発車してしまう。2人はバス停の
前で思案げに話をしている。
ヴェーラ「ついてないわ。あれ最終バ
スよ」
プラトン「タクシーで送る」
ヴェーラ「いいわよ。郊外だからタク
シーは行かないの。線路ぎわだけど」
プラトン「心配するだろう」
ヴェーラ「仕方ないわ。駅で寝るしか
ないわね」
プラトン「どこへ行く?」
 先に立って歩き出すヴェーラ、2人
は駅舎へ向う。
ヴェーラ「家へ有線放送で連絡しても
らうわ」
プラトン「食堂へ入れないかな?」
ヴェーラ「絶対に入れないわよ」
待合室
 ヴェーラが別れ際にプラトンに昼食
代を返し、ひとり立ち去る。
ヴェーラ「大事なこと忘れてたわ。借
金を返すわね。(けげんな顔つきのプラ
トンに)昼食代。定食、食べなかった
でしょう。返すわ。じゃあねJ
待合室のベンチ
 待合室のベンチはどこも、まどろん
だりチェスをしたり各々思い思いに過
ごす人々で満員である。プラトンはベ
ンチの空いた隙を見つけ、アタッシェ
ケースを枕がわりに置いてひとまず、
大きな身体を折りまげるようにして横
になろうとする。近くのトランジスタ
ラジオからヴィソツキーの歌声が聞こ
えてくる。
アナウンス「迷子のおばあさんがおり
ます。お心あたりの方は駅の派出所
へおいで下さい。繰り返します。迷子
のおばあさんがおります。お心あたり
の方は駅の派出所へおいで下さい」
 再び舞い戻ってきたヴェーラ、ベン
チの空席を捜して歩いているうち、体を
休めていたプラトンの足にぶつかる。
ヴェーラ「失礼」
プラトン「(起き上ると)どうしたの?
ここに、どう?坐れそうだよ」
 プラトン、ベンチにあった他人の荷
物を退かすと、ヴェーラにも同じベン
チで休むよう勧める。2人は自分たち
の荷物で一つのベンチをまん中で仕切
って横になろうとするが大きな身体を
もてあまし気味。互いに自分のスペー
スを譲ろうとしない。
プラトン「(荷物を下ろしながら)どか
しても構わんだろう」
ヴェーラ「(横になりながら)体が痛く
なるわね」
プラトン「(アタッシェケースを反対側
に押して)もうちょっと」
ヴェーラ「(負けずに自分のバッグを押
し返し)伸ばすわよ。ご免なさい、ち
ょっともう少し、そっちへ。これじゃ
眠れないわ、ご免なさい。だって落ち
てしまうんだもの」
 プラトンはあきらめてベンチの端に
腰掛ける。
ヴェーラ「(ハンドバッグを胸に抱えて
横になったまま)明日マクワウリを売
らなけりゃ。頭が痛いわ」
プラトン「死にたくなるね」
ヴェーラ「また運も開けるわよ。ピア
ノだって弾けるわ」
プラトン「監獄で?」
ヴェーラ「認められるわ」
プラトン「無理だね。僕は受賞したこ
ともない」
ヴェーラ「私よりはましよ。夫と別れ
て子供がいて手に職はないし。必死で
働くだけよ。(夢中で話し続ける)分る
かしら。夜、くたくたに疲れて眠ると
目の前をお盆や汽車がぐるぐる回るの
よ、大勢のお客たちと。その恐ろしさ
ったら、ないわ」
プラトン「腹がへってきた。何か持っ
てる?」
ヴェーラ「私も一日中、何も食べてな
いの。一緒に食べる?」
待合宝・ビュッフェのテープル
 ヴェーラはバッグの中から次々と食
器に入ったままの宴会の料理を取り出
してテーブルに拡げる。
ヴェーラ「ご馳走があるわよ。手伝っ
て。お店の残り物だけど、ふだんはろ
くな物はないのよ。豚にやるような物
しか。たまに、こういう役得もあるの。
宴会の日とかね。今夜は結婚パーティ
だったから」
プラトン「(少しとまどった表情で)見
てたよ。食べ残しを食べるのは初めて
だ」
ヴェーラ「何を言うの。食べ残しじゃ
なくて残り物よ」
プラトン「そうだったな」
ヴェーラ「きれいよ」
プラトン「分ったよ。とやかく言える
立場じゃない」
ヴェーラ、ちょっと気取りながらプ
ラトンに料理を勧める。
ヴェーラ「どうぞ」
威勢よく食べ始めるプラトン。
ヴェーラ「食べ残しよ」
プラトン「おいしい」
 口もとをハンカチで拭うプラトンに
ヴェーラはやはリレストランから持っ
てきた紙ナプキンを手渡す。
プラトン「ありがとう。おかしな夜だ
ね」
 プラトン、急に興に乗った風に仕草
を混じえながら宴会場の花嫁の役でし
ゃべり出す。ヴェーラも同じように朗
らかにプラトンの冗談に乗り、花婿の
口ぶりをまねしてしゃべり出す。
プラトン「僕は結婚式の花婿かな。そ
れとも客かな」
ヴェーラ「そうじゃないわ、花嫁よ」
プラトン「じゃ、君が花婿か?」
ヴェーラ「(眼をまるくしながら)私が?」
プラトン「そうよ。そんなに驚かなく
てもいいでしょう」
ヴェーラ「(格好をつけて)何か欲しい
かね?」
プラトン「オリープが欲しいわ。サラ
ミも」
ヴェーラ「(笑いこけながら)ほら、食
え。バターも魚もあるぞJ
プラトン「(普通の口調に戻って)バカ
バカしい。キャビアだ!」
ヴェーラ「(普通の口調で)花婿が食べ
なかったのよ」
プラトン「くすねたの?」
プラトン「(挨拶する時の仕草で)親愛
なる皆さん、皆さんのために乾杯を」
 ヴェーラ、タイミングを合わせるよ
うに、シャンペンのビンをバッグから
取り出し、プラトンの眼前に差し出す。
ヴェーラ「やっぱり、お酒好きなのね。
がんばって」
プラトン「直接、口をつけよう」
ヴェーラ「どうぞ」
矯正労働収容所・回想
 厳寒の労働キャンプ。因人たちの労
働を監視するやぐら。鉄条網の向うに
除雪作業をしているプラトン。
プラトンの声「鉄道をご利用の皆さん
に乾杯。切符が手に入って、無事に着
けますように」
ヴェーラの声「飲ませて。私も一言。
あなたに乾杯。あなたはいい人だわ。
健康を祈って乾杯!甘いシャンペン」
プラトン「おいしいよ」
待合室のベンチ
 ベンチでまどろむプラトンとヴェー
ラ。先ほどから裏側のベンチで様子を
伺っていたスリ、プラトンの背広のポ
ケットから財布を盗む。
プラットホーム,朝
 淡い陽差を浴びて人の群れが流れ始
めた早朝のホームを、プラトンとヴェ
ーラがマクワウリの入った2つのトラ
ンクを載せた手押車を押しながら歩い
ている。時々立ち止まって激しい見幕
で叫ぶプラトン。
ヴェーラ「幾ら、入ってた?」
プラトン「泥棒の巣だな。こんな町は
潰れてしまえ。200ルーブル入ってた。
汽車には乗り遅れる。旅券は持ってか
れる。そして今度は財布まで盗まれた」
ヴェーラ「奥さんに電話して頼みなさ
いよ。送金してくれるように」
プラトン「旅券なしで頼めるか!」
ヴェーラ「明日12時に戻るったら」
プラトン「なくさなけりゃね」
ヴェーラ「彼はなくさないわ。商売上

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